SIN (LOVE and DAYS・番外編②)


「千夜子さん」


「はっ、はい」


「ズボン履くから、その間あっち向いといてくれます?」


別に俺は見られてても構わないんだけどね。

と付け足すと、千夜子さんは窓に顔をぶつけそうなほどの勢いで、あっちを向いた。


窓ガラスに映る恥じらいの表情は、うぶな少女そのものだ。



「お待たせ。もういいよ」



ズボンのチャックを上げて言うと、千夜子さんはおずおずと向き直る。


マスカラを重ねづけした華やかな化粧。淡いピンクのミニドレス。

その上にダウンジャケットを羽織った、少々ちぐはぐな格好の千夜子さん。


つまり、着替えもせずに俺を追いかけて来てくれたんだ。


そう思うと嬉しくて、「ありがとう」が言いたいのに

真っ赤な千夜子さんの顔を見ていたら、俺まで言葉が出なくなった。



「今日はもうお店戻らないんだよね?」


前の席からハルキさんが、千夜子さんに尋ねた。



「あ、はい」


「じゃあ送って行くよ。家どこ?」


「T町です」


「了解。ここから20分くらいだな」



ハルキさんはそう言ってハンドルを切ると、ぴたりと口を閉ざした。