「……よかった、間に合ったぁ……っ」
息切れした声が外から響く。
「君、お店はどうしたの」
窓から顔を出してハルキさんが尋ねた。
「抜けてきました……シン君にあやまらなきゃと思って……。
あの、彼はもう帰っちゃったんですか?」
スモークのせいで、千夜子さんは俺が後ろに乗っていることに気づいていないらしい。
車内にいるのはハルキさんだけだと思っているようだ。
するとハルキさんは突然、おせっかい焼きの仲人のような口調で言い出した。
「後ろ、乗りなよ。シンに会わせてあげるから」
「えっ……」
いきなり乗れと言われ、当然ためらう千夜子さん。
そんな彼女を急かすようなタイミングで、後方の車から「さっさと進め」とクラクションが鳴らされる。
「ほら早く」
「あ……はいっ」
運転席の窓から見えていた、淡いピンク色が消えた。
そして次の瞬間、俺の横のドアが勢いよく開いた。



