大通りに出るまでの道は、酔っぱらいやキャッチの連中があふれていて、車がなかなか進まない。
退屈して再びタバコに火をつけるハルキさん。
着替え中の俺は、スーツのズボンから足を抜き、学ランのズボンを手に取った。
濃いスモークを貼ったこの車は、周りを気にせず着替えられるからいい。
「……おい、シン」
「はい?」
「じゃあお前はもう、あの子に会いに行くつもりはないってことか?」
え? まだその話題かよ。
「そうっすね」
ズボンに足を通しながら、ハルキさんの方を見ずに答える。
「でも彼女の方は、そうじゃないかもしんねーぞ」
「はい?」
片足だけ通した状態で、俺は顔を上げた。
ハルキさんが、運転席の窓を全開にして頭を出した。
その様子を後ろから見ていた俺は、ハルキさんの頭の向こうに、ピンク色の何かが近づいてくるのを発見した。
見覚えのある色。
千夜子さんのドレスの色だ。
あまりの驚きで、履こうとしていたズボンが手から滑り落ちた。



