SIN (LOVE and DAYS・番外編②)


「つーかせっかく、シンにしては珍しく、マジで気に入ってそうだったのにな」



さらりと投げられた言葉を、俺は最初、理解できなかった。


スーツのベルトを外しながら、「何がですか?」と訊いた。



「さっきの彼女のことだよ」


「………」


「あの子が席を離れてから、お前、ずっとソワソワしてただろ?」



ライターの炎が、フロントガラスに映って揺らめいている。


ハルキさんは最初の一口目を楽しむように煙を吸い込むと、運転席の横の窓を少しだけ開けた。


喧騒が、車内に流れ込んできた。



――『シンにしては珍しく、マジで気に入ってそうだったのにな』



こんな風に、ふいに心を見透かされるのが俺は苦手だ。

自分でも意識していない部分を当てられるのは、特に。


だから俺は、ちゃらけた態度でお茶を濁す。



「やだなぁ、ハルキさん。そんな風に見えました?」


「充分、見えた」


「別にそんなんじゃないっすよ。女の子ならみんな大好きだもん、俺」



笑いながら言うと、ハルキさんも「そうか」と笑った。