「未成年の方の入店は、お断りしていますので――」
「悪いね、俺がこいつを誘ったんだ」
騒ぎに気づいてやって来たハルキさんが、黒服の言葉を遮った。
「勘弁してやってよ」
常連らしい気安さで、肩をすくめるハルキさん。
黒服はそれ以上、何も言わなかった。
「帰るぞ、シン」
「……はい」
歩きかけた俺は、ふいに足を止め、千夜子さんの方を見る。
満足げにふんぞり返るオッサンの横で、千夜子さんは唇を噛んでいた。
「ちぃちゃん、ごめんね」
俺の言葉に、千夜子さんは顔を上げた。
「な~んか俺、完全にちぃちゃんの営業妨害しちゃった感じだよね。ごめん、ごめん」
嫌味な口調には、ならなかったと思う。
卑屈な口調にも、ならなかったはずだ。
俺は得意のヘラヘラ笑顔で謝って、ハルキさんとともに店を出た。



