今、この店には何人の男がいて、何人の女の子が働いているんだろう。
トイレの方に歩きながら、そう思った。
それぞれのテーブルから絶え間なく響く笑い声。
タバコの煙に隠された、下心や計算。
そんな中、無意識に彼女の姿を探しながら俺は歩く。
「ちぃちゃん。今日、お店が終わってから飲みに行こうよ」
見つけるより先に、その声が耳に入った。
二人掛けの小さな席の方からだった。
見ると、引きつった作り笑いの千夜子さん。
そしてその隣で、ぴったりと体をつけて座っているのは――
「あ……オッサン」
昨日、千夜子さんをホテルに連れ込もうとしていたオッサンだった。
思わず漏らした俺の声は、相手にも聞こえていたらしく。
「お前、昨日の!」
と、俺を見るなり叫んで立ちあがった。