そう
俺たちはたしかに
昨日、出会ったばかりなんだ。
……なのによ。
この状況はちょっと、おかしくねーか?
すぐそばで寝息をたてる、千夜子さんの無防備な姿を見ながら、俺は首をひねった。
事の起こりは数時間前。
千夜子さんの店で飲んでいたときだった。
「ちぃさん」
俺たちの席の後ろから、遠慮がちな低い声がした。
振り向くと、黒服の男。
さっき千夜子さんが「マネージャー」と呼んでいた、30歳くらいの細身の男だ。
どうやら千夜子さんの指名客が来たらしく、そちらの席に移るよう、呼びに来たらしい。
千夜子さんは黒服に小さく返事をすると
「すみません。ごちそうさまでした」
と形式的に言って、俺やハルキさんとグラスを合わせた。