「で、普通に働いちゃってるけど、足は平気なの?」
テーブルの下に視線を落として、俺はたずねた。
ドレスから伸びた彼女の足の先は、7センチほどの華奢なヒールのサンダルに包まれている。
ペディキュアを塗った、小さな足の爪。
そこだけ見ればたしかに26歳の女性という感じがして、不覚にも見とれてしまった。
「うん。おかげさまで、なんとか歩けるから」
短いドレスの裾を気にしながら彼女が言う。
「でもまだ痛いだろ? 治るまで休めばいいのに」
「……そうもいかないのよ」
声のトーンを落としてつぶやくと、千夜子さんは「水割りでいいですか?」と急に営業口調になった。
薄暗い間接照明の下、それなりに“水商売の子”に見える。



