「……あのぉ」


10分後。

俺は自分の首から下を見下ろし、微妙な声を出していた。



「どう見てもこれ、サイズ小さすぎません?」


「そうか? 似合ってるぞ」


そう言いつつも、明らかに笑いをこらえているハルキさん。


貸してもらったスーツは俺には小さくて、手首や足首が丸見えの、チンチクリンな姿になってしまった。



「ま、高校生に見えなけりゃ、何でもいいんだよ」



ハルキさんは駐車場に車を停めて、繁華街の方に歩きだす。


俺も開き直って車を降り、ハルキさんの後ろを歩いた。



「ここ」


と言ってハルキさんがドアを開けたのは、わりと有名なキャバクラだった。


黒服に案内され、照明の暗い店内を歩いた。



もうすぐ日付が変わる、この時間帯。

イイ感じに酔っぱらった客で、店は賑わっている。



「この店、来たことあるか?」


ソファに腰をおろして、ハルキさんが訊いた。


「いえ。初めてっす」


「けっこう可愛い子が多いんだぜ」


「へぇ~」


と相づちを打ったとき、後ろから女の子の声が響いた。



「いらっしゃいませ」




……ん?