もちろん俺だって、アキ本人から聞いたわけじゃない。
でもなぜか気づいちゃうんだよね、俺。
たとえば今もそうだ。
健吾が莉子ちゃんの頭をさりげなく撫でたり。
莉子ちゃんが最高の笑顔で、健吾に微笑んだり。
そういう光景を見るたびに、アキの無表情がかすかに揺れるのを、俺は見逃せない。
損な性格だよなぁって、自分でも思う。
「なぁなぁ、アキ~。こんど女子大生と飲み会あるんだけど、お前も行こうぜ」
俺はヘラヘラと笑いながら、アキの肩を揺らした。
「行かねぇ。興味ねぇ」
アキの反応は予想通りだ。
「シンさんってホントに、女の子が好きですよねぇ」
やり取りを見ていた真由ちゃんが、あきれたように苦笑した。
そう、俺は女の子が大好き。
そして、俺の周りにいる人間、みんなが大好きだ。
だからバランスを崩したくないんだよ。
みんなが幸せでいられる、絶妙のバランスを。