俺はアキの隣に座り、あたりを見回した。
「健吾と莉子ちゃんは?」
「飲み物買いに行ったから、すぐ戻ってくると思いますよ」
ミツルが答えたと同時に、自販機の方から歩いてくる健吾と莉子ちゃんの姿が、目に入った。
健吾は人ごみから莉子ちゃんを守るように、彼女の細い肩に腕を回している。
そこまでしなくても大丈夫だろ、と思うけれど、いつものことだから誰も気にしないんだ。
「シンさん、前髪かわいいですね」
俺に気づいた莉子ちゃんが、クスクス笑って言った。
「そう? でも莉子ちゃんの可愛さには負けるよ~」
「シン」
健吾が俺をジロリとにらみ、俺は肩をすくめた。
健吾たちが座り、6人がそろうと、この細長いテーブルは“俺たちの空間”になる。
健吾と莉子ちゃん、ミツルと真由ちゃん、アキ、そして俺。
この6人でいることが、いつのまにか自然なことになっていた。
あまりにも自然だから、たぶん俺以外は誰も気づいていないんだ。
アキが、莉子ちゃんに惚れてるってことに。
よりによって親友の彼女なんて。
これだから恋って面倒なんだよな。