お昼時の学食は、いつものことだけど生徒でごった返している。
翌日の昼休み。少し遅れて学食に入ると、窓際の特等席からミツルが手を振っていた。
俺は売店で買ったパンを持って、そのテーブルに駆け寄った。
「シンさん、それ、どうしたんですか~?」
ミツルの隣で、真由ちゃんが笑う。
「あ~これ?」
と、俺は自分の前髪を指さした。
それは、女の子が髪をまとめるときに使うヘアピン。
俺の短い前髪は今、3本のヘアピンで器用にねじって留められている。
「さっきクラスの女の子にやられたんだ。似合うっしょ?」
「似合う、似合う。可愛い~」
おどけて答えた俺を盛り上げるように、手を叩く真由ちゃんとミツル。
だけどそんな中、アキだけは白け顔だ。
テーブルに頬杖をついて俺を見上げ、「女じゃねーんだから」とあきれている。