SIN (LOVE and DAYS・番外編②)



それから俺たちは駅に向かった。


終電間近の改札口は人気もまばらで、どこからか野良猫の声が聞こえていた。


電車がくるまでの数分間、ふたりで並んでベンチに座って、缶コーヒーをすすった。



それはとても静かで。

胸がチクチクするのに、なぜか満たされていて。


たしかに幸せなひとときだったんだ。




「あ、そうだ。これ」


俺はタッパーの入った袋を千夜子さんに渡した。



「実家で食べて」


「何?」



袋に鼻を近づけて、匂いをかぐ千夜子さんの仕草。


見ているだけで、自然に笑みがこぼれてしまう。



「何だと思う?」


「わかんない」


「ヒント。ひき肉と、玉ねぎと」


「あっ!」



千夜子さんが目を輝かせて叫ぶ。


いろんな千夜子さんを見てきたけれど、やっぱりこの顔が一番好きなんだよな。



「ハンバーグ!?」



正解、と俺は笑った。