まぶしいくらいキレイな、千夜子さんの笑顔。
穏やかな表情。
自分の未来を歩きだした彼女に、「行くな」とは言えなかった。
「出発は……いつ?」
「今夜。このあとの終電に乗って行くの。
だから最後にもう一度だけ、部屋を見たいと思って来てみたんだけど……
そしたらシン君がいたから、ビックリしちゃった」
千夜子さんは泣き笑いの表情で肩をすくめた。
彼女の瞳にたまっていた涙が、ぽろりと落ちる。
……今すぐ抱きしめたいくらいに愛しい、けれど――
「千夜子さん」
「ん?」
抱きしめるより、言葉で言わなくちゃ。
一番伝えたかった想いを、今ここで。
「俺、千夜子さんに出会えてよかった」
「………」
千夜子さんはぎゅっと唇を噛んで、小さな声で、「あたしも」と言った。
「でも……今すぐシン君を選ぶことはできないの。あたし、まだ――」
「わかってる」
え?と千夜子さんが顔を上げた。



