井乃月の中で、あたしの実家の役割の大きさは本家に次ぐ。
井乃月本家の長女で、伝説の怪盗であるおばあちゃん。
そのおばあちゃん夫婦の家なんだから、まあ当然のような気もするけど。
そういう理由で重要ってわけじゃない。
うちの何が重要かっていうと、訓練施設が家の敷地の地下に作られてること。
家が新しい分、現代に適用した訓練施設を作るために好都合だったらしい。
「今朝のこともさ、勘が鈍ってるせいじゃないかなって思うんだ。だから……」
だからパパが『訓練の為に帰省しなさい』って言っても、全然不自然じゃない。
「不安なのか」
大貴は覗きこむようにあたしを見つめると、空いている方の手であたしの手を握った。
昼間、十星に手を握られたことを思い出す。
「ちょっとね」
あたしの復帰戦。
今度は髪の毛一本落とさない。
大貴のパートナーとして、あたしは最高の仕事をしてみせる。
「前よりパワーアップして帰ってくるよ」
「連絡は毎日しろよ」
「もちろん!」
あたしがにっこり笑うと、大貴は本当に愛おしいものでも見るように目を細めた。
その瞳に映っているのがこのあたし。
大好きな人に見つめてもらえることの幸せを、ずっと知っているつもりだった。
でも、本当は全然わかってなかったのかも。
言っても言っても足りないくらい。
伝える度もどかしくなりそうな幸せを、あたしは震えるほど感じていた。



