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「ただいまっ」
玄関にきちんと揃えられた大貴の靴を見て、大きな声を出した。
明かりのついているリビングに早足で入ると、昨夜と打って変わって穏やかな笑顔に迎えられた。
「おかえり。足平気か?」
「うん。血いっぱい出たけどね」
帰りが遅くなりそうだったので、あらかじめ連絡しておいた。
もちろん「十星といる」なんてことは言えるはずもなく、先生に遠い病院に連れていかれたことにした。
この辺りの病院で一番近いのはおじいちゃんのところだけど、あそこは正確には病院じゃない。
井乃月関係の人間が、人知れず傷を癒す隠れ家的な場所だ。
医師免許はおじいちゃんがきちんと持ってるけど、それを知ってるのは井乃月くらいだから違う病院へ連れていかれるのが普通。
「何してそんな怪我したんだよ……」
「それが、寮門のところに罠がみたいなのが仕掛けてあったみたいで……」
大貴は呆れ顔から一変。
鋭い目付きになって、手に持っていたカップをテーブルに置いた。
「……十星か?」
「仕掛けてあった所を考えると無差別だし、悪質な悪戯じゃないかな」
「なるほど。そのことは誰かに話したのか?」
「ううん。警察が出てきたらあたしが困るし。まあバレはしないだろうけどね。念のため」
あたしの言葉を聞いて、大貴は心底驚いたような顔をした。
大貴のこんな顔はちょっと珍しい。
「千夏とは思えないくらい賢明だな」
「ひっど!」
それでその顔ですか!



