「見逃してやる義理なんかないよ。今日初めて会ったんだもん」
「見逃して欲しいなんて思ってないさ」
走り出して約2時間。
車は山道を抜け、既に街中を走っている。
知らない街だ。
「意味がよくわからない」
「全部知ったらきっと気が変わるよ。キヨはそう確信してる。千夏があのヨシノの孫娘だから」
「おばあちゃん?」
「キヨの憧れなんだよ」
珍しい話じゃないけど。
あたしだって憧れてる。
世界を股にかけた、怪盗ヨシノ。
引退してもうずいぶん経つのに、未だに高い懸賞金がかけられている国もある。
でも、どういうこと?
ヨシノの孫だから、裏切りを見逃してくれるに違いないってこと?
それじゃあおばあちゃんがそうしてきたみたいじゃない。
おばあちゃんは、そんなことしない。
絶対に。
幼いあたしに守秘を何度も何度も言い聞かせたのは、他でもないおばあちゃんだ。
「さあ、着いたよ」
真剣に考えているあたしをまるで気にせず、あっけらかんと告げた。
窓の外を見回すと、赤レンガの塀がずっと続いている。
着いたと言いながら、まだ車は動いていた。
「ここどこ……」
呟いた瞬間、あたしの目に飛び込んできたのは、確かに覚えのある言葉だった。



