「で、何処に向かってるの?」
先生の車を走らせる十星に尋ねた。
「千夏が知ってて、千夏が知らないところ」
「なにそれ……」
また意味の分からないことを言う。
今に全部分かるんだから別にいいけどさ。
ここまであたしを悩ませておいてしょうもないことだったらどうしてあげようかね。
「まあいいや。ところであの先生、何なの?あんたの仲間?」
先生の車は、外から見たらただの黒のワゴン。
外車だということ以外は、特に変わったところはないのだけど……
中がちょっと変。
変っていうか、同業者のにおいがする。
大貴の持ってる仕事道具と似たようなもの、たぶん用途は全く同じものが搭載されている。
この手の物は大貴のテリトリーだから、扱い方はよくわからないんだけど……
こんなものを持っているのはあたし達か警察か、よほどの変わり者には違いない。
「キヨは俺の仲間っていうよりは千夏の仲間だよ。俺にとってはただの親戚」
「あたしのって……井乃月!?あんた井乃月に親戚がいたの!?」
「そ。新参だけどね。キヨは」
………
雲行きが怪しいな。
まさかここで井乃月が出てくるなんて。
「それにキヨにはちょっと協力してもらっただけだからね。仲間ってほどでも」
「……あたしにそんなこと言っていいの?一応これでも、本家の長女の孫だよ」
裏切りは放っておけない。
普段はバラバラに動いているけど、井乃月の結束は固い。
それに裏切りという綻びが生じ、万一、井乃月が崩れたとしたら、それは長く保たれてきた裏社会の崩壊にも等しい。
「キヨの行動が裏切りかどうかは、千夏次第さ」



