………え?
なに?なんの話……?
「いた……!」
聞き慣れた声に振り向くと、高瀬君がいた。
息をきらして、肩を上下させている。
さっきと同じ険しい顔をして、それにわざとらしく見えるくらい"心配"の色を浮かべていた。
「……何か用?」
「血の足跡……!」
言われて床に視線を移すと、あたしが歩いた跡と思われる赤い靴型が微かに、途切れ途切れに残っていた。
「あ……」
あたしは高瀬君の"心配"の理由を理解して、またその顔を見た。
「手当てしてもらったから平気だよ」
あたしの言葉には反応を示さず、高瀬君はこっちへずんずん大股で歩いてくる。
「ちょ……っ、平気だって!」
鬼気迫る顔にあたしが後ずさると高瀬くんは保健室のドアを勢いよく開け、あたしの腕を掴んで中に引き入れた。
直後、ドアが閉められた。
「な、なんなの!?」
ついさっき意味深な言葉を残して別れたばかりの先生は別段驚くでもなく振り返り、高瀬君を見た。
「手間が省けてよかったわ」
「キヨ!俺ら二人早退だ!あと頼む!!」
「!?っなに勝手に……」
キヨと呼ばれた先生は、机の引き出しから紙を2枚取り出した。
『早退』の2文字がちらりと見えた。
「いいわ。高瀬は病み上がりに大雨に見舞われ体調不良、内藤は登校中の怪我で通院、さっさと済ませなさい。ちんたらしてるからそんなことになるのよ」
先生はさらさらと、まるで医者がカルテを書くみたいに早退理由を書いた。
「車貸せ」
「……命令するんじゃないわよ」
そう言いつつも、高瀬君に向かって車のキーを放り投げた。



