その部屋はあたしの為に用意された客間だった。
敷かれた布団の上に下ろされると、そこにいたのはやはり……
「み、十星」
「やあ」
いつものようにへらへらと笑った。
「何で戻ってきたの……」
さっきと同じ十星が着ている黒い衣服は所々破け、唯一露出している顔には擦り傷がいくつもあった。
「……ってかあんたボロボロだね」
「やー、さすがに十人、しかも全員Aランク以上に追いかけられたらね」
少し照れたような表情をして、あたしの前に腰を下ろした。
「撒くの大変だったよ」
そう言って胡坐をかくと、大きく息を吐いた。
よほど疲れたみたい。
十星が逃げた後、警備に来ていた井乃月がその後を追ったが、結局追い付けなかった。
「お疲れ様。で、何の用なの」
聞きたいことは沢山あるのだが、ありすぎて何を聞いていいのかすぐには浮かばなかった。
とりあえず今ここにいる理由を聞くことにした。
「迷ってたみたいだから助けてあげただけ」
そう言ってニッと笑う。
二人の会話の続きは気になるけれど、確かに助かった。
あのままでは、二人に気付かれることなく移動することは出来なかったろうから。
「ありがと」
「わ、素直!」
一瞬驚いたような顔をした後、爽やかな好青年スマイル。
十星の顔を明るい中で見るのは久し振りだ。
暗がりで見るのもかなり久し振りだったけれど。
「あたしはいつも素直なはずですが」
「そうだっけ?ああなんか懐かしいよ。抱きしめていい?」
「イヤ」
即答すると「照れなくていいのに」とわざとらしく拗ねてみせる。
その顔に出来た傷からは所々血が滲んでやはり痛々しい。
「あんた今回、何がしたかったの?」



