あたしが「やばい、立って挨拶するの忘れた……」
と考えている中、


「もちろん、警察には言ってないんだろ」


最初に口を開いたのは大貴だった。


会沢藤五郎は大貴を睨み付け(ているように見えるだけかもしれないけど)、ふんっと鼻を鳴らして答えた。


「当たり前だ。井乃月の本家が警備に来るらしいがな。別に盗られたところで何も困らん」


そ、そんな馬鹿な……
大貴の言ったとおり、本当に盗られても構わないなんて。


……それにしても、この2人似てる。


仲はあまり良さそうには見えないけど、親子としての信頼はあるみたいだ。


会沢藤五郎は十星の予告状を、テーブルの上に投げてよこした。