あたしは自分の部屋に戻ると鏡を睨んだ。 いつもより、いつもにも増して顔が残念な分、化粧に気合が入る。 片手が使えなくなってからはいつも簡単な化粧しかしていなかった。 そして、やはり片手だと細かい部分が上手くいかない。 失敗しては綿棒で修正し、また、を繰り返す。 「お手伝いしましょうか」 …… あたしにはプライベートというものがないのでしょうか。 振り向くと出窓に高瀬君の顔をしたあの男が座っていた。