人一人そんな目に
合わせても

あなたの中には
心の傷が全く
残らないんだね…


「もういいよ」

私は冷たく言い放った

「もし…私に何かあっても愛斗くんは多分笑って
ごめんって言うんだよね

…これから私に
話しかけないで!」


そう言い残して
走って校舎に戻る


校舎裏に残された愛斗くんは、私の見えない所で

大きく溜息をついて…本当はその場で低く頭を
うなだれていたんだ…





春のある晴れた日

桜はほぼ散ってしまい
木には新緑が芽吹き、
風に揺られ、サワサワ
と静かに音をたてる

人の声一つしない
静かな空間の中、私の
足音だけが響いていた


声にならない…辛い
気持ちを彼が胸に
秘めていたなんて


…私は到底、
知る由もなかった