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「あ、やっぱり今日もおった。
世界で1番無謀な努力の女」

「オイ、そこのドラムバカ!
いきなり現れて人をそんな泥臭い感じの言葉で形容しないでよ。
こんな麗しい可憐ないい女前にして」


放課後の美術室。

かなり楽しみに突入した俺の目前には、昨日の最高傑作を更に凌駕する出来栄えのキャンバスに向かう柳田の姿。

勝手に込み上げてくる笑いを頑張って飲み込んで、再び彼女の側に椅子を引っ張ってきて座り込む。


「オイオイ、そこの美術バカ。
そんな調子乗った発言すんならせめて眉毛ぐらい書いてこい。
色々残念過ぎて突っ込む気にもなれへん」

「あーそれって超めんどくさ。
朝っぱらから眉毛書くんならこっちは一秒でも長く寝たいっての」

「くっ、お前って奴は。
ほんまに俺の期待を裏切らんな。
早々から腹よじれそうやからもう少し加減しろや」

「ふふん」


得意げに鼻をならし、またキャンバスに線を書き足す意外と綺麗な細い指。

やけどいちいち破壊的なそのタッチ。

そんな芸術的センスで化粧なんかしたら、もしかして素晴らしく芸術的な顔が出来上がるかもしれん。

薄い顔立ちの柳田が、某ザツギ団のようなカラフルな顔になったのを想像して盛大に吹き出して笑ったら、うるさそうに振り返った巨匠。

あーまじでおもろすぎ。


「っていうかさ、二日続けて登場ってうっとおしいよね。
さては私の魅力にとりつかれちゃった?」

「あぁ、もう恋焦がれて昨日眠れんかったくらいやし。
お前のその適当人生が、関西人の突っ込み気質を刺激すんねん」

「適当?
私これでも超大まじめに生きてますけど。
優等生を地で行くってストイック加減が、自分を追い詰めてる感じがしてゾクゾクすんのよね」

「何やねんなそのアスリート精神。
優等生やなくてただのドMやろ」