――――――

すっかり居座った美術室。

バイトの時間が迫ってるのに気が付いて、またキャンパスに向かう柳田と別れて教室に戻った。


人気のない校舎。

運動部の掛け声が微かに届く廊下を進み、自分の教室へ向かう。

そうしたら――

夕日が差し込む赤みがかった空間に、それ以上の赤色の物体を発見した。

“それ”は俺の姿を発見すると座り込んでた身体を勢いよく立ち上がらせて、お辞儀するように軽く首を前に揺らす。


――ああ、やっぱりな。

と、そいつを見た瞬間、驚きよりも納得の気持ちのほうが大きかった。


真っ赤な髪。
両耳の多数のピアス。
まあるくデカイけど勝ち気な目。

いつもはほんわかした空気が今はピリッと緊張が走ってる風で。


思わず足を止めかけたのをごまかして、それまでと同じ歩調でそいつに近づいた。

しかもわざとらしい笑みまで浮かべながら。


「――どないしたん、タケ」