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その日の夜の俺の心理状態はもちろんぐちゃぐちゃで。

昼間のミヤの泣いた顔と、挑戦的な目つきと、自分の腑甲斐なさとでドラムの練習する気分にすらなれんかった。


まさしく“ああ、やってもうた”。
俺最悪やろ……と。


ダサくも俺の中は後悔の嵐。

今日の嘘の訂正しようか、アホみたいな賭けを破棄しようか。

ミヤの番号を表示させた黒の携帯電話片手に、自分の部屋のベッドに寝転んだ。

だけどやっぱり画面を閉じて、その辺に投げ捨てる。


……今更何言うん?
あいつを真剣に想ってやることも出来へんのに。

適当な言葉を並べて、慰めて、嘘ついて。
結局いつかはまたあいつを切り離す事になるのに……。


やったらやっぱり俺に出来るのは一つや。

――今を期に、ミヤの俺への想いをきれいさっぱり無くしてやる事。

ああ見えて実は情にめっちゃ脆くて、寂しがり屋のあいつを、俺なんかいなくたって、前を向いて笑ってすごせるようにしたる事。


それが一番、あいつの為になるはずなんや。
絶対に。


10畳程のシンプルな家具が並んだ部屋。
スピーカーから大音量で流れてくるのは、プログレバンドのニューアルバム。

ここのドラマーのテクが超やばくて、普段なら一瞬たりとも意識を反らず事とか出来へんはずやのに、
今の俺はおもくそ“心此処にあらず”状態で……。


あかん。
なんやめっちゃイライラする。

なんて頭が腐り切った自分を感じつつ、天井を眺めながら静かにため息をついた。


『嘘を本当にする』
とか、そんなクソみたいな覚悟を決めたせいで。