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それから二年。

俺の周りではかなり色んな変化があったけど、一番ありえへんのは目の前のこれや。


「……これとかよくね?」

「え〜ちょっとかわいすぎる!
もっとハードな感じが好きだなぁ。
ほら、こっちとか」

「う゛ーん、確かにこっちのが俺の趣味にも合ってるけど、女がするにはゴツすぎんだろ」

「全然平気〜。
だって親指用だし」

「は?薬指じゃねーの?」


教室の窓際の前後の席に座り、一つの携帯画面を顔をよせあって眺めてるこの男女は、校内きっての名物カップル。


「薬指?
別にどの指でもよくない?」

「ええっ!?
でもせっかくだしさ。
一応ペアリングなわけだし?」

「でも私あんまり華奢な可愛い〜って感じのリング、好きじゃないんだもん」

「あ〜、お前がそう言うなら、まあ仕方ないか。
それに薬指は本物用に取っとけばいーしな」

「えっ!な、なにそれ」


教室内って事も忘れて、いちゃつきまくるそいつら。

ハートマーク飛んでんで周り。
しかもピンク色の。


でも俺にしたらすでに見慣れすぎた風景で、今更突っ込みいれんのすら面倒や。

勝手にやっとれ……ってそんな感じ。


今の会話からわかるとおり、相手の女に尻に敷かれまくってんのは“あの”リョウ。

女にだらしなくて、軽くって、無節操な下半身男だったアイツが、こんなにも一途な純愛野郎に成り代わるとは、誰も想像すらしてへんかったやろう。

――きっと本人でさえも。