少女は、外したピン止めをまた髪につけた。
そして、黒板に名前を書いて自己紹介する担任の先生を見上げる。
一番前の真ん中の席の背の高い男の子が目に入る。
その子の背が高すぎて、先生の名前の下の方の字が見えない。
「僕、背が高いから後ろの席に移動させてください」
手を上げたのは、一番前のその少年。
小学校5年生とは思えない大人びた横顔と堂々とした態度。
「そうだな。君は一番後ろの席の子と交代しよう」
少女の隣の席の背の小さい少年が一番前の席へ移動する。
そして、背の高い少年がゆっくりと後ろの席へと歩いてくる。
「よろしく」
小声で挨拶をした少年は、少女の隣の席に座る。
ポっと赤くなる少女の頬。
ペコリと頭を下げた少女は、背の高い彼の名札を見て、しっかりと名前を確認していた。
僕の役目はもう終わり。

