「日向岡、聞いてるのか?」
先生は、涼太に向かって大声を出した。
涼太の名字、難しい。
『ひゅうがおか』って言うんだって。
涼太は、先生に向かって軽く右手を上げて、聞いてますよって言ったんだ。
何とも生意気で憎たらしいのに、憎めないのは笑顔のせい。
ニヒヒヒって笑って、ノートを開く。
だめだよ、先生。
今、先生が涼太を注意したせいで、クラスのみんなが涼太を見てしまった。
今、一体何人の女子が恋に落ちただろう。
見る限り、このクラスに涼太以上の男はいない。
僕は1年1組から1年6組まで、覗いて回った。
うん。
間違いない。
学年で一番かっこいいよ、涼太は。
そして、彼はこの地域では有名なサッカーの選手らしい。
この噂は、5組の女子から聞いた。

