「はぁはぁ」
桜子も必死で自転車をこいできたようだ。
ベンチの前で立っている涼太を見つけると、ペコっと頭を下げ、自転車を停めた。
涼太は、同じようにペコッと頭を下げたが、桜子は自転車を停めていて、その涼太を見てはいなかった。
涼太は、髪をいじりながら、またベンチに座った。
桜子がボールを持って走り寄って行くと、涼太はまた立ち上がる。
片手をポケットに入れ、余裕ぶっている涼太だけど、もう片方の手は髪を触ってばかりで緊張しているんだとわかる。
「待った?」
「いや。今来たとこ」
ぎこちない会話に僕がドキドキしてしまう。

