──「ユミちゃん、だね」

動揺を隠し、ハンカチを掴んで彼女の動きを止めて言った。

「すっかり、大人になっちゃって」

彼女のほうこそ、すっかりと大人びていて、
僕たちがあぶく銭で行った安いキャバクラにはすっかり馴染まない。

小田切さんのような人が通う、
この店のホステスに相応しい成長を遂げていた。

僕たちが席に戻ってしばらくしても、
すっかりと上機嫌の須藤がユミちゃんに気付く事はなかったが、
指名した女性が度々席を外すことに、
少々落ちつかない小田切さんがいた。

するとユミちゃんは小田切さんの隣へ行き、

「ツトムちゃん、アヤさんこないだ、こんなこと言ってたよ」と言った。

恐らく彼が指名してる女性の事だ。

「ん?」と、彼が聞き返す。

「私の好きな四字熟語は、小田切敦って」

すると、小田切さんは「バカだな」と言いながら、
グラスの酒を飲み干して、新しいボトルを注文した。