そのずぶ濡れの背中を見て、僕はまた嘘つきになる。

雨のあがった空を見上げて、自分勝手な願い事を言ってしまう。

僕の一番目の願いはきっと叶わないから。

二番目の願いを空に放つ。

それが一番の願いだって、自分に嘘をつきながら。

自分に言い聞かせながら。





どうか。

どうか、彼女の好きな人が、彼女を幸せにしてくれますように。





こればかりは、僕にはどうにもできないから。



わがままな僕は、もう1つだけ願いを言った。





どうか、雨を降らせて下さい、今すぐに。





この頬が濡れている言い訳がどうしても見つかりそうになかったんだ。

僕は、そっと、傘をさした。