不機嫌そうに私の顔を見つめるこの男に、
いつもデレデレ話している子たちの名前を言ってやった。
すると…
「 あぁ〜、そらデレデレしてまうわ。」
と、なんとあっさり認めたのだ。
信じられない。
「 最低っ!!大っっ嫌い!!」
掴まれたままの腕を振り払い、
そう怒鳴りつけ、再び走り出そうとすると、
今度は、走り出す前に奴の腕のなかに捕まってしまった。
抱き締めれた状態で、
その心地良い体温から逃れたくて、私はとにかく騒いだ。
「 離してっ!!馬鹿!!嫌い!!女タラシ!!
…このっ、
○○○○野郎っ!!!」
「 えぇぇっっ!?
ちょっ、“○○○○野郎”は言い過ぎやろっ!?
つーか、女の子がそんな言葉 公衆の面前で言うたらアカンってっ!!」
そう言ったあと、
奴は小さくため息を吐き、
雨で顔に張り付いた私の髪の毛を整えながらさっきの話の続きを言い出した。
「 俺が、あの子らにデレデレして話してんのはな、
オマエの話やからやで…?」
「 はい…?」
「 だから、オマエの話や。
“彼氏でもないくせに惚気んな”て、いっつも言われとる…。」
そう言って、悪戯っぽく笑った表情に、
なぜか
きゅーんとなった。

