あたしは佐伯さんに自分のことを話した。
東京出身で、
大学で経済を学んでいること。
美容院は月に2回行くこと。
ネイルサロンが好きなこと。
彼氏は1年半いないこと。
他愛もない話を佐伯さんは真面目に聞いてくれていた。
「愛ちゃん素直だね。キャバ嬢っぽいけど、中身は普通。」
「つまんないですよね。」
「そんなことないよ。
まだ染まってない所がいい。俺は気に入った。」
「ありがとうございます。
そういうこと言われ慣れてないから、どう反応したらいいか、よくわかんないですけど・・・。」
「いいんだよ。それで。
ってか、もう少ししたら愛ちゃん呼ばれちゃうかな。」
「そお・・・ですね。」
「青木ー!」
佐伯さんは大きな声でホールにいる青木さんを呼んだ。
「はい、どうしました?佐伯さん。」
「愛ちゃん指名して。
場内じゃなくて本指名ね。
あと、ピンドンくらい一本あけよっか。」
「かしこまりまりました!ありがとうございます!」
周りに座っていた女の子達が、ちらっとこっちを見た。
あたしは状況が読めない。
「あのぉ・・・。いいんですか?なんかすごいお金かかってるんじゃ・・・。」
「いいんだよ、今日は愛ちゃんとの出会いに乾杯。それでいいんだ。」
ああ、多分、あたしが思っている以上に、
このひと、この世界を知ってる人。
遊びを解っている人。
数分後、シャンパンとグラスが運ばれてきて、
ポンッという軽快な音で栓が開けられ、
10万円というドンペリは数分で二人の胃の中に消えていった。
