眼帯×CHOCOLATE

空にはもう月が出ている。

再びくるりと進行方向を変え、俺は脇目も振らずに走り出した。頑張ったら十五分ぐらいで着くんじゃね?という安易な考えで。

「コレ、やり合う前にバテる可能性大?」

いやいや、ないない。

脳内自主ツッコミをかまして、再び走る事に没頭する。そろそろお気付きだろうか。

そう、目的地は野々上センパイの家

何で椎名瑞樹の所じゃないのかって?まあ、こう見えても色々と考えてるわけですよ。

まず、椎名瑞樹は
銀ちゃんが絶対にブッ飛ばす!

だから俺は何もしない。そして、実質あの三年グループを纏めているのは、野々上恵だとここ数日間の観察で解ったんだ。

勿論、強さやカリスマ性でいったら椎名瑞樹の方が上だと思う。

けれど、頭を使わないといけない時もある。裏で手を回す事だって必要だろう。その辺りの役割を、あの先輩がやっていた。

それと、これが決定打。あの椎名瑞樹も、どうやら一目置いている存在だという事。

なんて、とっても親切なご都合解説をしていると、目の前に豪邸が見えて来た。

「あーっと、アレかな」

徐々にスピードを緩め、一度止まってから息を整える。つうか!全然十五分じゃねえし!いっそフルマラソン気分ですけど?!

「あー、しんど…」

思いの外遠くて、既に限界ヨロシク状態。

それでも、ぶつぶつと愚痴を零しながらもゆっくりと家に近付いて行った。そして、目に入る表札。


――野々上