揺れる銀色の髪の毛

黒いシャツに黒いパンツ

手には白い百合の花




「……何で、来たんだ」

ぴたりと歌は止み、銀ちゃんは天を仰いだ。俺達の方を見ようとはしない。その素振りに、爽と要は哀しそうな表情を浮かべた。

「帰れよ」

小さな、小さな、声。

俺はぐっと拳を握り、一度だけ蝶子さんのお墓を見てから銀ちゃんに声をかける。

どうか、どうか。


「銀ちゃんも帰んだよ?」
「―――」

耳に届くのは、自然が織り成す音だけ。銀ちゃんの声は聞えない。

「俺達は、銀ちゃんを迎えに来たんだ」

もう一度、ゆっくりと言葉を紡いで目を閉じた。やっぱり、聞えるのは自然の音だけ。

でも、ここで引き下がるわけにはいかない。俺は、俺達は杏姉とも約束したんだ。


『銀ちゃんを連れて帰る』って


だから絶対にわかって貰う。絶対に一緒に帰る。笑顔で、杏姉のところに戻るんだ。

「銀ちゃんが帰れって言ったって、俺達は帰らねえよ?」
「―――」

爽も要も黙って俺の言葉を聞いている。銀ちゃんに俺の声は、届いているのかな?