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長く、

緩やかな坂道を登った先にあったのは、小さなお寺。此処に蝶子さんは眠っているんだ。

そして、銀ちゃんが居る。

逸る気持ちを抑えて、俺達は一つ一つお墓を確認していった。人の気配は未だない。


「此処であってるよな…」

手にしている紙切れを見直して、小さく呟く。空は綺麗な青色で、手には白を基調とした花束が一つ。

「どこに居るんだよ。銀ちゃん、蝶子さ…」
「――しッ!」

俺の声を制止して、要が突然人差し指を唇にあてた。

「聴こえない?」

意味が解らず、思わず首を傾げる。けれど、その首はすぐに真っ直ぐに戻った。

「……歌ってる?」

「これ、…銀か」
「ええ、銀さまよ。きっと」

その、澄んだ歌声は俺達の心を掴んで離さない。優しくて、切ないメロディに、意外にも相性の良い低音。

ある女性シンガーの一曲。

それを、完全に自分のものにしている。ストレートに、心に響いてくる。こんな気持ちは初めてだ。

「…銀ちゃん」

歌声の聴こえる方へと、

俺達は足を進めた。声に手繰り寄せられるように。声に導かれるように。