――暗転


まさかの半殺しの刑に遭った俺は置き去りに、杏姉と爽達は楽しそうに話をしている。

「爽くんと要くんな!話は銀からよく聞いてたんだけど、はじめまして。姉の杏だよ」

あの、俺も、入れて?

「充はほっときゃいいから。アイツ昔からあんな扱いだからさ」

あの、それ、酷くね?

つうか!爽に要!なに笑ってんだよ!なにこの公開虐め!そんなに俺を虐めて楽しいのか?!アッ!楽しそう!駄目だコリャ!


「って、ちっがーーう!俺達は銀ちゃんの事について話に来たの!」
「……蝶の墓参りだよ」

杏姉の言葉に、さっきまで笑顔を見せていた爽と要が固まった。勿論、俺も。

「銀は蝶、…蝶子の墓参りに行ってる。ついて来るなって。一人で行きたいんだって、だから私達は待ってるしか出来ないんだよ」

くるくると、ティーカップの中でスプーンを忙しなく動かしながら、杏姉はふと視線を落とした。

「話は聞いてる。椎名の弟にバラされたんだろ?銀の昔の話」

くるくる、くるくる、スプーンを動かす手は止まらない。

「こんな筈じゃなかったって。あいつらにはちゃんと、自分の口から話をしたかったって」

それは杏姉の声だけど、俺には銀ちゃんの声に聞えた気がした。だから、


「杏姉、蝶子さんのお墓がある場所を教えてくれよ」

迷うことなんてない。

だって俺達のする事は一つだろ?それは爽も要もわかっているみたいで、二人共こくりと頷いて立ち上がった。


「「「お願いします!」」」