眼帯×CHOCOLATE

◆◆◆

強くなりたかった。誰よりも、強くなりたかった。悲しむ人を守れる様になる為に。

あの日、から。

杏姉に色々と教えて貰い、戦い方を覚えた。人の守り方を教わった。そして自らあの学園を選んだ。ヤンキーだらけの黒凰学園。悲しむ人をもう出さない様に。犠牲を、出さない様に。自分が頂点に立つのだと。

そして、何の因果か当時黒凰学園の頂点に立っていたのは“あの”椎名柚樹の弟で。

弟に罪がある訳ではない。頭では解っていた。けれど、気がついた時には自分の拳は血塗れになっており、椎名瑞樹は血を吐いて崩れていった。

もしかしたら自分も、アイツと同じなのではないだろうか。血塗れの拳を見る度に、そんな疑念が浮かぶ。人を痛めつけて楽しんでいる?

違う、違う、違う!



――トップ交代。

学園を治める頂点の人物だけが着る事の許される、漆黒のブレザー。皮肉にも銀色の髪の毛とよく似合っていた。

そして程無く、左目に眼帯をする様になる。

蝶子ちゃんの瞳で、こんな腐った世界を見たくない。見せたくない。この眼帯を外す時、それは皆が笑い合える様な、そんな世界になった時。自分の疑念が、消えた時。

「―――」

どうしようもなく不安になる日が続いた。押しつぶされそうになる日が続いた。でも、そんな時、ミツが現れたんだ。


『てか、銀ちゃんじゃね?』


変わらない空気
変わらない表情
変わらない幼なじみ

ミツ、僕がどれだけミツの存在に救われていたか知らないだろう?どれだけ嬉しかったか知らないだろう?ああ、そう言えばミツと蝶子ちゃんは似ていた気がする。

僕の、――救世主。