眼帯×CHOCOLATE

どうしようもなく、涙が溢れた。

まだ、感覚なんてわからない筈なのに。熱くて、哀しくて、重たい。瞳が、嘆く。


『私が、銀の左目になるよ』


蝶子ちゃん、
あれは夢じゃなかったんだね。

「…っく……ひっ…うぅ…」

息を引き取る間際、蝶子ちゃんが救急隊員に頼んだらしい。あの子に、私の目をあげてと。

「杏姉、僕、僕……強くなりたい…大切な人を守れるように、強くなりたいよ…」
「――銀」

杏姉は、そっと僕の頭を包み込んでくれた。そこから伝わる振動は、僕のものかな?杏姉のもの?ううん、きっと。

二人のものだね。

「蝶子ちゃん、笑ってくれるかな」
「……ああ、笑ってくれるよ」


「銀が望んだだけ、きっとな」




病室の窓から見える、

コバルトブルーの綺麗な空。そして、その青空よりも美しく見えるアオスジアゲハが一匹。ひらり、ひらりと、

天に向かって飛んでいった。







――銀、大好きだよ――

僕も、僕もだよ。蝶子ちゃん。

これからもずっと、生きていく限り、この心臓が止まるまで。この眼に映る世界が消えるまで。僕も、ずっと。ずっと…