「うあ゙アアアぁあ!」
左目に、今まで味わった事のない強烈な痛みが走る。いや、痛みなんてものじゃない。焼けるような、燃えるような感覚。
熱い、赤い、
熱い、赤い、
「…ギィイイーーーンッ!」
ねえ、蝶子ちゃん。
僕は蝶子ちゃんに笑っていて欲しかったんだ。蝶子ちゃんの笑顔が大好きだったから。だから、これから先はずっと笑って過ごして欲しい。
僕が死んだら、蝶子ちゃんはこの人から解放されるのかな?解放されたらいいな。
ねえ、蝶子ちゃん。僕が死んだからって悲しまないでね。笑っててよ。お願いだよ。
「逝けや、糞ガキ」
あの弱虫で泣き虫だった僕が、今こんなにも穏やかに“死”を受け入れている。右目が霞む。体が痙攣する。声が、思うように出せない…
「……ちょ…こちゃ…大す…」
ああ、最期に笑顔を見たかったな。
――ドン!
心臓を目掛けて、思い切り振り下ろされた右腕。ドクン、ドクンと、生温かいものが一気に溢れ出す。
殆ど何も身に纏っていない、その白い肌からは夥しい量の血液が流れ。見る見る間に白い絨毯を赤く染め上げていった。
「銀、私も大好きだよ」
ぽたぽたと、僕の顔に透明な雫が落ちてくる。赤色ではない、綺麗な透明な雫が。
「……ハア?蝶子オ?…何でや…何で…」
目が霞んで見えない。
何も見えないよ、蝶子ちゃん…



