眼帯×CHOCOLATE

何故なら見つけてしまったから。消え入りそうな程、小さくて弱々しい蝶の泣く声を。


「……銀、逃げて」

ひらり、ひらり、

いつも元気よく羽ばたいていた蝶。でも、今は羽を杭で打ち付けられ、まるで標本にでもされたかの様な姿。

「そんな、蝶子、ちゃん…」

僕は目を疑った。

僅かに開いた扉の隙間から見えた蝶子ちゃんの姿。それは、自分の想像を遥かに超えたものだった。

辛うじて身に着けている状態の下着。剥き出しの肌には、痛々しい程に無数の痣が浮き出ており、血が赤黒く変色してこびりついている。

ヤンキー仕様だったけど、いつもバッチリだった化粧は剥げてボロボロ。そして、

手には手錠がかけられていた。

ねえ、どうしてこんな事をするの?蝶子ちゃんが一体何をしたっていうの?誰か、僕にもわかるように教えてよ。

 
「………て」

掠れた声で、蝶子ちゃんが必死に何かを伝えようとしている。でも、僕の耳には届かない。僕の体は動かない。

「…に、に…げてぇ…銀…!」

ああ、そう言えばさっきも同じ事を言ってくれたね、蝶子ちゃん。

「なあ、ボクぅ?お兄ちゃんと遊ぼか?…時間、大丈夫なんやろ?」
「―――ぁ」


黒い、侵食が始まる。