「ぎ、銀さん!アイツらが…!」
血相を変えて入って来たのは、さっき俺にニヤニタ笑みをくれていたヤンキー。
はてさて、アイツらって?
とか、暢気に考えていたのも束の間。乱雑に置かれていた机を軽く飛び越し、銀ちゃんがドアの方へと一目散に走って行く。そして、
「――ミツ!」
名前を呼ばれたと同時に投げ渡される物。
「は?警棒?」
「腕、鈍って無いんだろ?元剣道部主将、甲斐充」
「!」
全く、いつの話をしているのやら。
俺はずしりと重い警棒を見つめながら、ガシガシと大袈裟に頭を掻いた。そう言えば、転校初日だっつって気合い入れてセットしてきてたんだっけ。髪の毛。
ま、女の子も居ないし。モテ意識しても惨敗決定だし、寧ろここじゃリーゼントとか剃りこみとかモヒカンとかの方がモテそーだわ。――野郎共に。
「終わったらちゃんと話聞かせろよなー」
「ああ、終わったらな?」
「おっし!ならノッちゃる!」
どちらからともなく伸びて来る腕。拳と拳をぶつけ、小気味好い音を響かせ合う。
「てか!俺は喧嘩する為に剣道やってた訳じゃ無いんですけど?!」
「分かってるって」
「ほんとですかねソレ」
「ホント、ホント」
「…うわあ、嘘くせえ」
何故か、
一瞬の内にして打ち解けあっている俺達を見て、周りのヤンキー共が道を開けていくその様は。おお、気分爽快ってやつ?



