眼帯×CHOCOLATE

それでも、やっぱり居ない。

蝶子ちゃんは此処には来ていないのだろうか。そう思って、諦めかけたその時。

「―――!―――!」

確かに、蝶子ちゃんの声が聞えた。それも苦痛に耐え忍んでいるような声が。

「ちょう、こ、ちゃん?」

ドクン、ドクン、

まただ。また、心臓が煩い。お願いだよ、静かにしてて。蝶子ちゃんの声を消さないで。

「蝶子、ちゃ…」

僕は、この日を忘れない。




元は、従業員専用の部屋だったのだろうか。そこはあまりにも不自然で、何故一番最初に気が付かなかったのかと後悔した。

こんなに沢山の人がいるのに、その扉の数メートル範囲には全く人が居ないのだ。まるで、遠ざけられているかのように。

「蝶子ちゃん」

ふらふらと、足が扉の方へと向かう。その足取りは重く、鈍かった。

コワイ、カエリタイ
イカリ、エガオ…

色々な感情が、僕を刺激する。


 
「ちょ、待て!そこは…!」

静止する声が、とても遠くに聞えたけど。でも、そんな事は関係なくて。僕の足は止まらない。

「蝶子ちゃん」

ただ、無心で叩いた。

頑丈に鍵が掛かっているらしく、ビクともしない扉。叩いても、ドアノブを乱暴に回しても、閉ざされたままの扉。

「蝶子ちゃん!蝶子ちゃん!」