『ぎーん!一緒に遊ぼー!』
『かっわいーな、もう』
『銀も杏ちゃんも大好き!』
『銀みたいな弟が欲しかったなあ』
『優しいね、銀』
『銀、銀、銀…』
『痛いよ、辛いよ…』
蝶子ちゃんは幸せだった?
本当に幸せだったの?僕にはとてもそんな風には見えなかったよ。蝶子ちゃんは、昔の方が幸せそうだった。
「…蝶子ちゃん!」
陽の光が殆どなくなりかけている。もうすぐ、暗闇が訪れるだろう。
ねえ、神様。僕に出来る事って何だろう?何が出来るんだろう?でも、後悔だけはしたくない。だって、蝶子ちゃんは僕にとって大切な人だから、だから…
「はあ…はあ、…っ!」
――スナック響
街から忘れられたようにポツンと立っているこのスナック。今は営業休止状態で、二大勢力の溜まり場となっている。
昔、杏姉と蝶子ちゃんには内緒でつけて行った事があるんだ。悪い子でごめんね。
「―――」
ドクン、ドクン、
今にも心臓が飛び出そうな程に、緊張しているのが解る。いつもの弱虫で泣き虫な僕なら、立っているだけで気絶してしまうところだろう。でも、今、目蓋を閉じれば。
浮かぶ笑顔があるから。だから、僕は。



