眼帯×CHOCOLATE

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小学校、三年生の春


「あの頃の銀ちゃんは…」
「て、ちょっと待て!」

せっかく此処から過去篇だ!テコ入れだ!掻い潜れ!無慈悲な打ち切り!的なノリの俺を静止して、銀ちゃんは項垂れる。

「過去語りとか、唐突すぎ」
「や、コレ読者に優しくね?」
「―――」

はあ、と。

幸せ逃げちゃうレベルで測ったら、マックスK点超えるぐらいの全力な溜息の後、気付くと増えている俺のたんこぶ。なにこれ、ダブルコーン?

「てか、なんで銀ちゃんが番長?」
「番長言うな…」
「なー!なんで一人だけブレザー?ズルくね?それズルくね?そんでもってなんで俺呼んだわけ?つーかなんで眼帯?なんで黒いの?お洒落なの?目指せヤンシャレロードなの?!」

俺の

“何でなんで”攻撃に。恐らくギリギリ耐えていたであろう銀ちゃんの堪忍袋の緒ってやつがネジ切れた。物理的に。そう、ブチッと。だって音聞こえたもの。本来、聞える筈のない音がバッチリ聞こえたもの。


「ミツ、黙れ…」

ぎ、ぎぎぎ銀ちゃん?!おま、ちょ!なにその拳!鉄でも仕込んでんの?!サイコガンでも移植したの?!壁ドン(はぁと)どころか壁ドゴオォン!って音がしたんですけど!壁にヒビが入ってんですけどオオオオ!

お、おおお俺、知ーらない!てかこんな銀ちゃん知ーらない!見た事なーいし!見たくもなかったしいいぃ?

「だから、だだ漏れだっての」
「…え、マジで?」

俺、死んだかもしーれない。

今にもゾンビヨロシク襲い掛かってきそうなオーラを放つ銀ちゃんに、身の危険を感じて後ずさりを一歩、二歩。

すると、タイミングよくドアが荒々しく開け放たれた。ヨッシャ!キタコレ勝った!