眼帯×CHOCOLATE

一つ大きく脈打った心音と共に。

遠く何処かへと閉じ込めていた筈の昔の記憶の欠片が、映像となって頭のなかに流れ込んだ。

見覚えのある顔、懐かしい空気、



 
「てか、銀ちゃんじゃね?」

とびっきり、

間抜けな声がぽろりと零れる。そりゃそうだろ。だって、目の前に居る人物は俺のよく知る人物だったのだから。


低い身長(コンプレックス)
整った顔(女顔って泣いてたな)
謎の眼帯(どうしてそうなった)


いや、いやいや。ありえなくね?だって銀ちゃんは…いや、ウン。ないない。違うって。ない。それはない。ないだろ?……え、あの銀ちゃん?俺の知ってる?銀ちゃ…え゙え゙え゙え゙え゙ぇ゙


「久しぶりだな、ミツ」

oh…

これ完全に銀ちゃんだよ。俺の事“ミツ”って呼べるのは銀ちゃんだけだったもの。銀ちゃんだけに許された特権だったもの。

よし、ちょっと落ち着こう。

一旦落ち着こう。落ち着ける時に落ち着いとこう。まず、俺が父ちゃんのキンタマ袋の中にいた頃から整理すんべ?…あ、無理。それはちょっと無理か。色んな意味で。

と、とにかく!俺の数々の素敵な思い出、…いや。アレは寧ろ最悪な思い出?と、とと取り合えず返せ!俺、の、銀、ちゃん

返っっっせぇええ!


「やかましいわボケぇえ!」
「…あれ?心の声漏れてた?」
「だだ漏れだ馬鹿やろう」

ゴン、と一発脳天にそこそこ良い拳を貰う。くそう、夢でもなかったか。チョー痛てえ。


「ホント、変わらないね。――ミツ」

不意に、優しい口調になる銀ちゃんに。昔の面影が重なった。

ああ、もう。何がどうしてこんな風になったのかは分からないけれど。認めるしかねーのな。目の前に居る人物は間違いなく

“東雲 銀”その人なのだと。