「て、ミッツン?それ全然上手くねーよ?それどころか俺、ちょっと傷付いちゃった」
ワオ。
なにその可愛らしいポーズ。ちょ、イカツイハゲが泣き真似とかしてんじゃねえよ!アレか!ギャップ萌え狙ってんのか!お、俺は騙されねえぞおオオオ!
などと。
心のなかで大絶叫逃避行していたところ。鋭く冷えた銀ちゃんの声で、強制的に現実世界へと引き戻された。
「夏木と笹田が?」
要を引き剥がした銀ちゃんが、顔を顰めながら声を荒げる。
「ふざけるな!」
その、尋常ではないガチな怒りに、爽と一緒に銀ちゃんのもとへ足を進めると。要が、俺たちを制するように手を上げた。
「これ、アンタ達もよく見て。そして、読んどきなさい」
渡されたのは、一枚の写真とその裏に書かれた赤い文字。
We'll be back in an hour and a half.
(1時間半以内に戻る)
「うげ…」
写真に写っていたのは、さっき名前が挙がっていた二人、…だとは思うんだけど。正直、断言はできない。それ程までに酷い状態。
「ムカツク事してくれるじゃない?これ、後一時間半以内に戻るって書いてあるけど」
俺からするりと写真を抜き取ると、要は今までに見せたことのない冷たい眼で笑う。
「丁度三ヶ月前の“あの日”のあの時間と、同じよねエ?」



