眼帯×CHOCOLATE

その日、

人類は思い出した。奴ら(チョコレート)に支配されていた(暴力という名の)恐怖を。鳥籠のなかに、以下略を。
 
「ミツ、殺されたいのか?」
「トンデモアリマセンスミマセンマサオ」


ひらり、ひらり、

銀ちゃん怒りの一発で、写真は風に飛ばされ窓の外へと落ちていく。甘い匂いを漂わせて。

ひらり、ひらり、荒れた大地に触れる事なく掬い上げられたそれは。




「まだ居据わっとるみたいやな、――東雲」

俺さ、知らなかったんだよ。

この学園がどんなに危険かってことを。どんだけヤバイ奴らが居たのかってことを。

「椎名さん行きますか?」
「いや、今日は止めとくわ」

握り潰した写真をグラウンドに放り投げ、ふっと笑みを浮かべる一人の男。

「もう少し頂点を味あわせとったる。“先輩”からの、ほんのプレゼントやで?」






衝突まで、あと五日。

まさかこの時の男が、これから起こる事件の鍵を握る人物になるだなんて。爽も要も下っ端ヤンキー達も、もちろん俺だって知る由もなかった。

でも、ただ一人だけ。銀ちゃんだけはわかっていたのかもしれない。

「ん?外に誰か居んの?」
「……ああ、さっきの“ゴミ”があるだけだ」

この時の、

銀ちゃんの僅かな変化に気がつく事が出来なかったことを、俺は後に後悔する。