「――っ何よ!馬鹿みたい!」
ブーツの底で荒々しく砂の音を立て、要はそのまま走り去ってしまった。気のせいだろうか。泣いていたように見えた気がする。
「ミツの勝ち、みたいだね」
「んお?」
不意に視界が遮られたかと思うと。どうやら学ランを頭にかけられたらしい。そして、そのままぽんと優しく肩を叩かれた。
「別に、勝ちとかそんなん関係ねーよ。それに端からマジで戦う気とかなかったしさ」
「…気付いてたのか?」
銀ちゃんの言葉に、一つ呼吸を置いてから口を開く。
「まあ、ね。悟られないようにはしてたみたいだけど、ずっと右足庇ってたからさ。つうか、あの状態であんだけ動けるとか化け物かよ!末恐ろしいわ!」
「ミツ、」
「って、ことでさ?」
ガバッと立上がって、もう一度空を見上げた。チクショウ。やっぱりド快晴じゃねえか。
「ソーウ!アイツの学ラン取ってくれよ!」
俺の突然の行動と振りに、爽のやつ鳩が豆鉄砲くらったような顔になってやがる。ププッ、可愛いハゲ…ってそうじゃなくて!
「ちょーっと、ひとっ走り追いかけてくるわ」
だから、それちょーだいと腕を伸ばせば。爽から要の学ランが、ナイスキャッチで抛られる。その、手の中の学ランを確認して、俺は二カッと笑った。
「イイ天気だし、せっかくだから皆で遊ぼうぜ!な、銀ちゃん」
「……好きにしろ」
ふいっと顔を背ける不器用な銀ちゃんに、俺はもう一度だけ笑った。



